2006.4.6 第190号

FAX北九医ニュース 北九州市医師会広報委員会



◆◆◆ 日本医師会役員選挙結果について ◆◆◆

4月1日(土)、日本医師会の役員改正選挙が行われた。
会長については唐澤東京都医師会長が現職の植松日医会長を46票差で破り当選をした。
また、副会長については定員3名に対し7名の立候補者があったが、植松陣営から立候補をしていた3名が会長選後に立候補を取り下げたため、残りの4名による選挙となった。   結果は唐澤陣営から立候補をしていた3名が順当に当選をし、中でも竹嶋福岡県医師会長はトップ当選で筆頭副会長に就任した。
選挙期間中より自民党との関係修復を訴えていた新会長・副会長は5日(水)、早速党本部を訪れ、小泉総理、武部幹事長、中川政調会長、青木参議院会長、川崎厚労相ら実力者と面談を行った。
尚、選挙結果の詳細は以下のとおり。
*会長選挙結果⇒・唐澤人候補198票(当選)・植松治雄候補152票(落選)・金丸昌弘候補(京都府医師会員)0票(落選)
*副会長選挙結果⇒・竹嶋康弘福岡県医師会長252票(当選)・岩砂和雄岐阜県医師会長230票(当選)・宝住与一栃木県医師会長192票(当選)・土屋隆日本医師会常任理事133票(落選)




◆◆◆ 苦情相談事案について ◆◆◆

本会に寄せられた苦情の中から、他院でも参考となるような事例を紹介させていただくコーナーです。
※今回の事案⇒後発医薬品を出してくれない(50代・男性)
※内容⇒A医院を受診した際、健康保険組合から渡された『ジェネリック医薬品お願いカード』(本ニュース第183号参照=平成17年11月6日発行)を受付に提示したが、後発医薬品を処方してもらえなかった。そこで調剤薬局に後発医薬品の在庫と料金を尋ねると、自分の薬の場合、料金はだいたい先発医薬品の3分の2くらいで、在庫もあるが、医師の指示がなければ出せないと言われたので、再度後発医薬品の処方を希望したところ、院長より「うちは後発医薬品は使わない」と理由もなく断られたとして不満を訴えているもの。
※解説⇒厚労省が行った医薬品産業実態調査の結果では、医療機関が後発医薬品を使用しない理由として、「メーカーに対する信頼感が薄い(56.8%)」、「薬剤に関する情報が不足している(53.1%)」「後発医薬品メーカーの訪問回数が少ない(37.3%)」「安全性に問題がある(17.1%)」といった意見が上位を占めており、医師の中にはいろいろな考えがあること、また医師が患者を診察して投薬が必要と判断した際に、どのような薬剤を選択するかについては、患者の選択権に配慮しつつも、最終的には医師の処方権(*注記)の問題であること、などを説明し、問者に理解をいただいた。
  各医療機関においても後発医薬品の処方を強く希望する患者に、医師の判断で処方しない場合には、こうした例をご参考いただくなど、何らかのご説明をお願い致します。
 (*注記)医師の処方権については、昭和54年に当時の橋本龍太郎厚生大臣が武見太郎日本医師会長からの照会に対し回答した書簡の中に「医師の処方権の確立が保障されていること」が明記されております。




◆◆◆ 日本の医療制度を評価 ◆◆◆

先日の読売新聞に掲載された本田麻由美記者のレポートが興味深かった。
情報公開や患者参加などアメリカ医療の前衛的な取り組みを取材するため、ハーバード公衆衛生大学院を訪れたのに、逆に日本はなぜ「皆保険」「健康長寿」「低費用」という3拍子が揃っているのかという議論が行われており、日本国内では医療改革や医療不信が高まっているにも関らず、外から見るとアメリカの研究者や学生が日本の医療を高く評価していることが新鮮でおもしろく感じたというもの。
日本の年間平均外来受診回数はアメリカの3倍なのに1人当たりの医療費は半分以下であり、それでいて各種の健康指標は世界トップレベルである。
同記者は1ヶ月近くに及ぶ取材で、最先端のがん治療や研究開発の様子を実感できたとする一方、アメリカ社会には機会の平等は保障するが、結果の平等は保障しないという伝統的な考え方があり、医療においても保険制度は平等に加入できるよう用意するが、国家が面倒をみてまで全員を入れる必要はないという意見が支配的で、発言力の強い患者団体からも皆保険を求める声は聞こえないという。
その結果、4,500万人もの無保険者が存在している。
日本もデフレ脱却後、急速に格差社会が進んでおり、行き過ぎた改革や形を変えた混合診療の解禁等により、優れた医療制度を瓦解させないよう、こうした声を広げていかなければならない。
【参考=読売新聞4月7日朝刊より】




◆◆◆ 医療費は増えていない ◆◆◆

4月3日(月)、慶応大学経営大学院の田中滋教授は、連合主催のシンポジウムの中で、「財務省や経済財政諮問会議が主張している医療費の増大による財政悪化理論は誤りだ」とし、「彼らの主張の背景には近年の大幅な税収減で医療費の国庫負担分の捻出が難しい状況があるためだ」とした。
具体的には平成9年度からの6年間で国民医療費総計は9%増加、年平均では1.45%増、65歳未満に限ると6年間で1.6%増、年平均では0.27%増で、ほとんど増えていないとした。
また、経団連の「医療費の増大が企業の国際競争力に影響を及ぼす」との主張については、「事実認識の誤りで、我が国は諸外国に比べて1人あたりの医療支出が最も低い」ことを強調し、その上で「平成9年度からの6年間で保険料の事業主負担が2,000億円減少しているのに対し、保険料と患者負担はあわせて1兆4,000億円が増加し、明らかに患者負担の方が増加している」ことを指摘した。