事業計画&重点項目


令和4年度 北九州市医師会事業計画

本市において初めて新型コロナウイルス感染症患者が確認され2年が経過したが、今なお市民の多くが健康や安全な生活に不安を抱いている。
近年、国はいわゆる三大疾病や生活習慣病、アレルギー対策を医療政策の中心とし、また病床の削減を目的として施設から在宅へのシフトを押し進めようとした結果、変異しながら猛威を振るうウイルスを前に国民生活は一変し、経済も滞って社会は経験したことのないほどの大混乱に陥り、医療界においてもSARSやMERSをどこかよそ事のように傍観していた我々に様々な課題を突き付けた。
本会ではこの間、市行政や上部団体に対し、時々に必要な対策を提言し続け、協議を重ねながら検査体制を整備・充実させるとともに陽性者外来を設置、宿泊療養施設や自宅待機者への健康観察、クラスター発生施設への支援、病床の確保、ワクチン接種等々、病・診を問わず会員が一丸となって総力を挙げ、あらゆる対策を講じて来た。
「100年に一度のパンデミック」や「国家的危機」とまで言われた新型コロナウイルスは2年もの長きにわたり猖獗を極めたが、医療従事者らによる献身的なワクチン接種に加え、治療薬の開発も進み、長く苦しかった闘いに少しずつではあるが、明るい兆しも見え始めた。
ただ、我々は収束に向け、単に愁眉を開くだけでなく、ウィズコロナを前提に今回突き付けられた課題を教訓として平時からの有事に備えた医療機関の機能・特性に応じた役割分担の徹底や行政をはじめとした関係機関との連携による強固な医療提供体制の構築、そして何より医師にしか担うことの出来ない役割に矜持を持ってその使命を果たすべく、日頃より高邁な精神を培い、医師としてまた医師会員として、意識の高揚を図らなければならない。
一方、コロナ禍においても少子高齢社会は着実に進行しており、医療・介護を取り巻く課題もまた山積している。国がコロナの収束後、全世代型社会保障制度の構築に向けた社会保障の全体像を描くうえで、現在の「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」に変わる新たな財政検証のための指針として、社会保障費の将来推計の見直しを行うことは必至である。
これが給付の抑制ありきで進められることのないよう注視し、問題点を県医師会を通じて日本医師会に訴え続けていかなければならない。
また緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が繰り返される中で市民が医療現場における感染を必要以上に杞憂するあまり、健診の未受診や過度な医療機関への受診抑制を来たし、医療の大原則である疾病の早期発見早期治療の機会を逸するなど、市民の健康への影響が大いに危惧される。
極めて特殊な状況下におけるこうした市民行動が徐々に日常生活を取り戻していく上で常態化してしまわぬよう、誤ったメッセージを質し、本来あるべき予防や健康づくり、適正な受診行動の必要性を根気強く啓発し続けていくとともに、感染対策の徹底等、受診者が不安なく健診や医療を受診できる体制を整え、市民の命と健康を守るための保健・医療・介護施策の推進に取り組んでいかなければならない。
特にその中心となって医療から社会活動に至るまでの多様な役割を担う「かかりつけ医」の機能強化や支援を通して、一人ひとりのライフサイクルに応じた生涯保健事業の推進をはじめとした予防や健康管理の充実に注力し、人生100年時代に相応しい健康寿命の延伸を目指す。
北九州市医師会は今年度も引き続き県医師会や各区医師会と問題意識や課題を共有しながら関係をより深化させ、行政や関係機関とも一体となって子育て支援をはじめ、高齢者・障害者には切れ目のない医療・介護を重層的に提供すべく地域包括ケアを推し進める。
地域医療構想や外来機能の問題は病院だけのものではなく、「かかりつけ医」のあり方や役割が重要であり、「外来・入院を問わず地域医療は地域に集う医療関係者の手で作り上げていく」とした地域医療構想の原理原則を持って実態に即した効率的な医療提供体制を構築し、世界に冠たる国民皆保険制度の下で、必要な医療が等しくかつ過不足なく提供できる体制を堅持していく。
更に専門医会・産業医科大学等との連携を強化し、英知を結集して工夫を施しながら効率的な会務の運営に努め、市民が生涯を通じて心身ともに健康で豊かな生活を送れるよう、市民生活の根幹を成す社会保障制度の充実に専心すべく重点項目をはじめとした事業項目の推進に邁進する。


令和3年度 北九州市医師会重点項目


1.感染症対策
新型コロナウイルス感染症の収束に向け、引き続き県医師会や地区医師会、行政らと連携し、対策に必要なあらゆる手立てを講じていく。
また今時の感染拡大の経験を教訓として、平時より感染症指定医療機関・急性期病院・療養病院・診療所の役割や連携を整理し、新興・再興感染症に備えた体制を整備するとともに、研修等を通して、医療従事者の感染症に対する見識を高める。
一昨年12月、全国に先駆けて県のワンヘルス推進基本条例が制定され、あらためて人と動物の共通感染症対策や共生社会づくりを推進していくための取り組みがはじまったことから、本市においても北九州市や北九州市獣医師会と締結した「ワンヘルス推進宣言」に基づき、市や県が設置するワンヘルスセンターと連携した感染対策の他、市民に対して正しい知識の普及に向けた啓発活動等の社会活動に取り組む。
2.医の倫理と医療安全対策
医師は職業の尊厳と責任を自覚し、高度な倫理感と矜持をもって日々自らを律しながら教養を深め、人格を高めて診療や地域活動に取り組まなければならない。
また医療の公共性を重んじ、法規範の遵守と法秩序の形成に努めるとともに、医療を通して社会の発展に尽くすべく世界医師会の「医の倫理マニュアル」、日本医師会の「医の倫理綱領」及び「医師の職業倫理指針(第3版)」、福岡県医師会の「よりよい医療を目指して」等を周知し、医師としての職業倫理指針を示すとともに、会員一人ひとりの自浄作用を活性化させていく。
日本医師会医師資格証の普及を通して、会員としての意識の高揚と医師としての使命感や職業倫理の醸成をはかる。
安全安心な医療は医師と患者・家族の信頼関係の根幹を成すものであり、引き続き医師・従事者へ「医療安全対策研修会」や「ハートフル研修会」等、市医師会や県医師会が開催する研修への積極的な参加を促し、患者の安全確保と医療の質の向上を最優先とした医療安全対策の推進に取り組み、市民の医療への信頼をより一段と高めていく。
3.生涯教育の充実
本会においても日本医師会の「医師は日進月歩の医学・医療を実践するため、生涯にわたって自らの知識を広げ、技能を磨き、常に研鑽する責務を負う。医師の生涯教育はあくまで医師個人が自己の命ずるところから内発的動機によって自主的に行うべきもの」とする生涯教育の基本理念に基づき、会員支援に努める。
特に医師が最新の技術や知見を習得し、いわゆる臨床医学の実践における医療水準を満たした医療を提供出来る様、必要な情報を提供し、スキルアップや安全対策、患者との信頼関係の醸成等をはかるべく生涯教育制度の更なる充実に取り組む。
研修会については、専門医会や関係機関と連携して、時流にそった医学的・医療的テーマを選定し、より多くの医師が生涯学習に参加できるような体制を整えるとともに、ウィズコロナ等における新たな研修体制のあり方についても引き続き検討を行い、多様な履修環境を提供し、日医生涯教育制度の申告率・達成率の向上を図る。
4.地域医療提供体制の充実
より効率的な医療提供体制を構築していくためには、各区医師会との更なる連携強化が必要であり、特に外来医療計画や病床の機能分化と連携の推進について、絶えず市と区が情報を共有しながら、医師会での忌憚のない議論と検証を経て、地域医療構想調整会議を活性化させていく。
また現場に即した内容や時流に沿ったテーマを取り上げた研修会を開催し、地域の医療・介護に取り組む医療機関や従事者を支援し、地域における医療・介護の更なる充実と質の向上をはかる一方、北九州市や関係機関と連携し、障害者施策や難病・発達障害者支援にも注力する。
更に、救急・災害時や生涯保健等、切れ目のないサービスの提供を目的に取り組んでいる北九州とびうめネット(医療情報ネットワーク)の更なる拡充を図り、迅速で適正な医療の提供を推進する。
地域医療の重要な担い手となる看護師の養成について、学校間における情報や課題を共有し、引き続きその在り方について検討を行う。
5.救急災害医療対策
夜間休日急患センターやサブセンターへの出務等、初期救急医療に積極的に協力するとともに、二次・三次救急、周産期及び小児救急医療にも注力するなど、市民からの需要と期待が高い救急医療の充実に努める。
一方、関係機関と協働しながら、市民の適正な救急受診に対する啓発活動にも積極的に取り組む。
またコロナ禍における救急医療のあり方や出務医の安定的な確保、時代に即したものとするべく、引き続きより良い制度に向けた検討を行い、救急医療提供体制の更なる充実と安定化を図る。
近年、地震や台風、集中豪雨等、各地で災害が頻発に発生する中で、会員や関係機関に対し、「医療救護計画」の周知徹底をはかるとともに、緊急連絡網訓練の実施や災害医療研修等を通して、医師や従事者等の災害医療に対する意識を高め、有事の際の災害医療に関する知識と技術の向上に取り組む。
6.少子高齢社会対策に向けた取り組み
少子高齢社会が一段と進行する中、相談から検査・診察・診断・治療・その後の対応に至るまでを担うかかりつけ医を中心とした多様な職種や機関との連携による対策を支援する。
また患者や利用者が可能な限り住み慣れた地域で有する能力に応じて自立した日常生活が送れるよう、引き続き地域包括ケアを充実させる等、地域の実情に即した医療・介護提供体制の構築に努める。
医師や医療・介護従事者を対象とした各種研修会の開催を通して、質の向上や高齢社会対策の担い手となる人材の育成を図る。特に患者需要の高い在宅医療については研修を通じるなどして、会員が参画するための障壁を取り除き、担い手を増加させていく。
本市において4万人、高齢者の約7人に1人が認知症という実態を踏まえて、市の認知症支援・介護予防センターや認知症疾患医療センター、ものわすれ外来をはじめとした様々な役割を担う関係機関と連携しながら、医療や生活支援の他、予防や啓発活動に注力する。
乳幼児・園児に携わる医師や関係機関を対象とした研修を通して、質の向上をはかるとともに、乳幼児健診やペリネイタルビジット、産科健康診査をはじめとした子育て支援の充実を通して、市が目指す「日本一子育てしやすい街」の実現に向け注力する。
また虐待予防や医療的ケア児への対応に取り組み、市が中心となって進める発達障害者への地域支援にも積極的に協力し、これを推進していく。
7.地域保健活動の推進
北九州市や関係機関と連携し、予防接種や感染症対策の他、乳幼児期から学童期・青年期・壮年期・老年期に至るライフサイクルに応じた生涯保健事業を実施し、またアレルギー対策を含めた学校保健活動や職域における健康等に取り組む。
治療ばかりでなく、人生に寄り添う医療が求められる中にあって、相談から治療、その後の対応に至るまで、多様な役割を担うかかりつけ医を支援し、その機能の強化を図る。
特定健診・特定保健指導の受診率向上や生活習慣の改善や行動変容を促す等、市民の健康づくりを支援し、現役世代からの健康づくりや高齢者への介護予防を推進し、市民の健康寿命の延伸をはかる。
我が国の死因第1位であるがんについては、行政や関係機関と連携し、啓発の徹底や検診受診率の更なる向上をはかり、国の第三期がん対策推進基本計画の3本柱である「がん予防」「がん医療の充実」「がんとの共生」を推進する。特に年間2,800人近くが亡くなっている子宮頸がんについては検診に加えて、ようやく厚生労働省副反応検討部会・薬事食品安全対策調査会によりHPVワクチン接種の再開が承認されたことを受け、有効性を示す研究データを使った啓発等、積極的な勧奨活動を通して接種を促進する。
乳がん検診については昨年10月より始まったデジタル読影の円滑化と充実を図る。
喫煙はがんをはじめとして循環器疾患や糖尿病・慢性閉塞性肺疾患等、生活習慣病の最大の危険因子であり、国の「現在及び将来世代を保護する」という基本理念に沿って、未成年者や妊婦・望まない受動喫煙をなくすための対策に取り組むとともに、喫煙率自体の減少にも努める。
更に、各区医師会と一体となって、地域産業保健センター事業を活性化させ、予防や早期の対応が必要な職域保健の充実に取り組む。また産業医に対しては「作業管理」「作業環境管理」「健康管理」の3管理に加えて、近年長時間労働者や高ストレス者へのメンタルヘルス対策が求められていることから研修や情報提供の充実に努める。
8.勤務医活動の支援
勤務医医学研究助成論文事業を実施し、勤務医の研究活動の支援に取り組むとともに、県医師会や日本医師会との連携、情報共有、医学集談会の開催等を通して、開業医との連携の推進に努める。
北九州専門医レジデント制度や研修医歓迎レセプション、研修医症例報告事業等を実施し、研修医の支援をはかるとともに、本市における医師・研修医の安定的な確保をはかるべく実状に即した対応を行っていく。また勤務医・研修医の入会促進と入会後の定着、医師会活動への積極的な参加を呼びかけていく。
2024年に迫った「医師の働き方改革」については引き続き問題点を啓発し続けながら、情報提供するとともに、日本医師会が進める「医師の健康への配慮」と「地域医療の継続性」の両立という観点から、医師個人の希望が反映される多様な働き方を求めていく。    また「医師の偏在対策」については、相互に関連し合う「地域医療構想」「医師の働き方改革」との三位一体改革として都道府県単位で検討が行われることから、日本医師会の「医師の負担軽減」や「地域の特性に基づく確保対策」「多職種連携の推進」という立場を支持し、人口や医療提供体制・医療機能等からみて、真に適正な配置となるよう関係機関に働きかけていく。
9.男女共同参画事業の推進
女性医師が抱える問題を医師会全体で共有し、対応していくための一環として開催している「男女共同参画推進部会研修会」をはじめとした活動をより充実させるとともに、行政や関係機関との連携をはかりながら、女性医師がより働きやすい環境作りに取り組む。     また日本医師会や県医師会が開催するセミナーに積極的に参加し、見識を高めるとともに最新の情報等を積極的に会員へ提供していく。
更に地域における女性医師指導者の育成をはかるとともに引き続き女性医師が医師会活動に積極的に参画できるような体制づくりを進める。
10.広報活動
市医報、北九医FAXニュース、ホームページ等の充実を通して、必要な情報の迅速な提供に努める。
また、県医師会と連携して市民への医師会活動の周知をはかるとともに、医師会への理解を高めていくための情報発信方法等について検討を行う。
11.会員支援
医師会として会員相互の融和促進や会員福祉の向上を図るべく休業時の補償制度の充実や医業経営支援のための研修会の開催、診療報酬の算定をはじめとした医療保険に関する情報を迅速に提供していく。
12.公益社団法人としての適正運営
公益社団法人として相応しい会務の運営や公益目的事業の円滑な遂行を通して、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与し、また法人の安定的な運営に努める。
13. その他
本会は令和5年度に創立60周年の節目を迎えることから、記念事業等の対応について検討を行う。